NPO法人場作りネット 

目指すのではなく、すでに実現する

なぜ劇場なのか(2020年会員報告より)

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なぜ劇場なのか

コロナ禍で自殺が増加している。そのことと、我々が支援拠点を、劇場に置き始めたことは、無関係ではないと感じている。

コロナ以後、我々の相談対応件数は倍増した。しかしそれはコロナによる困難というよりも、元々あった困難が、コロナ禍によって出口を無くしているという印象を持っている。つまり、ある「息詰まり」を感じるのだ。

この間、暴力を受けている若者や、女性を立て続けに保護した。明らかに保護が必要な状態にも関わらず、システム(制度・法律)の壁に阻まれて、警察も行政も医療も福祉も、誰も、彼女達を助けられない状況が続き、私は一週間近く家に帰れなかった。

自分たちの仕事の領域を守るために、大人が寄って集って子ども一人守れない。

そういう状況が続いた。しかし、そういった状況自体は今に始まったことではない。これまでも、その壁に立ち向かうのが、我々の仕事の大きい部分ではあった。しかし、コロナ禍でその壁が一層、厚くなっている印象がある。誰もが非難や責任を迫られることを恐れ、壁を厚くしている。そして、何より、そうした壁を、超えるための力、つまり想像力や共感力や協働力、心理的余力が、総じて弱まっている。つまり現実の壁を、誰もが越えがたくなっているという実感があるのだ。

コロナ自粛で演劇が中止され、映画館や美術館が閉鎖されている事。旅行や飲み会が自粛されていること。そういった「不要不急とされてしまったことの不在」と、この「現実の壁を超える力が弱まっている」ことは無関係には思えないのだ。

戦時中に政府はあらゆる表現活動の検閲を行い、戦争賛美以外の物語を禁じた。物語や表現活動は、人々を自由にし、現実を変える力をもたらすものだと、分かっていたのではないだろうか。まさに今、あらゆる表現活動がその場を奪われていることと、我々が現実に抗う力(新しい物語を想像する力)を弱めていることは、そうした状況と重なる。

私たちが、相談支援という現場で、絶望の物語を語る人を前にした時に、出来ることは、同じ人間として隣に座ることだけだ。

自分をまっすぐに語り表現する時間や空間が必要なのであって、それこそが、私たちに本来備わっている力を高めてくれる。

システムが現実を押し潰さんとしている今、私たちには、そのような時間こそ必要である。

人々の悲鳴が数字として表れるとき、支援窓口が増やされる傾向にあるが、本当に今、必要なのは、私たちの暮らしの中にそうした現実を超えるための「空間」や「時間」を作ることなのではないかと感じる。

「助けるシステム」よりも「助かる文化」こそが今、必要だと感じるのだ。

コロナで不要不急と言われ、自粛を迫られた街中の劇場に、今、あらゆる分野の人が集まりだし、そうした問題意識を共有し、困りごとを抱えた人を受け入れはじめたこと。

これまで出会わなかった人たちが、出会い、対話を重ねながら「のきした」という新たな文化が作り直されようとしていること。

そのことに、私は一筋の希望を持っている。

nokiproject.webnode.jp

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sainotsuno.org

 

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